GRで萌えてみる

「ジャイアントロボ」のBF団十傑集で妄想展開中。メインは成長したサニー(17歳設定)のラブストーリーとか10歳くらいの幽鬼のお話。拍手・コメント等いただけたら管理人喜びますw

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別れの情景

 寂寥とした荒れ地を彼は歩いている。
 吹きすさぶ風は冷たく、彼はコートの襟を立てた。
 草木の枯れ果てた丘の上、鳥の声も獣の声もなく、ましてや人の声などしない…風の声をのぞけば。
 そんな中でたった一つだけ彼の眼を射るものがあった。
 丈の高い枯草の茎に七色に光るなにか…おそらく虫かなにかの卵のようだ…それが彼の目を射止めた。
「ふむ?」
 暗雲の立ち込める空であったが、彼がそれを天にかざすと薄い膜を通してなにかが蠢いているのが見える。
 面白いものを手に入れたかもしれない…彼はそれを持ち帰ることにした。
 自宅に戻ってすぐ、卵が孵化するのに十分な環境を整えてやった。
 もう永く使っていなかった水槽に土を敷き詰め、卵ごと折り取ってきた茎を立てる。
 それから物置にランプがあったことを思い出し、水槽に熱を与えるように調節した。
「あの環境の中にいたのだ。温めないほうがいいのか」
 さらに書庫へ足を向けて、埃まみれになった虫の図鑑まで引っ張り出してきた。
「ああ、やはり温めてやったほうがいいか」
 図鑑の内容にひとり納得し、メガネをずらして水槽の卵を見つめた。
 図鑑に目を戻した彼は、ふと自分のやっていることがいかに彼らしくない行為かを思い出し苦笑した。

 一週間が過ぎたころ、彼がいつものように荒れ地の散歩から戻ってみると卵が割れていた。
 さては孵化したはいいが養分もなく、身を寄せる茎はか弱いために息絶えたかと思い、水槽に目を凝らしてみると…水槽の隅に見慣れぬものがあった…いや、いた、というべきか。
「なんだ、これは…」
 彼が絶句したのも無理はない。
 そこにいたのは、芋虫でも毛虫でもなく…小さな小さな人の形をしたものだった。
「これがあの卵から孵ったというのか」
 およそこの世で起きえぬことが彼の家で起きたのだ…誰かに知らせるべきだろうか?
「もしかしたら…これが妖精というやつかもしれんな」
 彼は唇の端を歪め、メガネをかけて改めてそれを見た。
 指の先に乗りそうな小さな人間が、水槽の隅にうずくまっている。
 鳥は孵化して最初に見たものを親と思う習性があると聞いたことがあるが、これはそうではないらしい。
 彼に対して不信そうな目を向けただけだった。
「まあ、なんにしても…お前はどんなふうに育つのか」
 それから彼は、今度は書庫から妖精に関する本を引っ張り出してきたが…もとより存在するかどうかもわからないもの、育て方など書いてあるはずもない。
「人間と同じと考えてよいのか」
 指の先に水滴を乗せて差し出すと、それは…妖精は少し警戒しながら水滴に口をつけた。
 納得した彼は今度は牛乳を乗せてやった。
 妖精はそれが気に入ったようで、今度は警戒せずすぐに吸い付いてきた。
 コツがわかってくると…人間の子供のように育ててやればよいのなら…生育はそう難しくなかった。
 ただ、妖精はなにもしゃべらず表情も乏しくて、彼との意思疎通のはかるのが難しかった。
 それでも自ずと求めていることがわかるようになってきて、彼は徐々にこの無愛想で可愛げのない妖精が気に入り始めた。



 妖精の成長は人間の子供よりはるかに速かった。
 そのため彼は、最初は人形の家を与え、それから模型の部屋へと住処を替えてやらねばならなかった。
 もっとも、妖精の大きさは50センチあるかないかで、それで成長が完了したらしくそれ以上大きくはならなかった。
 無愛想のまま、生意気に彼を見上げる仕草が、もう自分は一人前だと言っているようで微笑ましい。
 そして彼は妖精の背中にくしゃくしゃと縮れたものを見つけた。
 どうやら翅のようだが、まだ十分に伸び切っておらず飛べないようだ。
「あの七色の光は、この翅のものか」
 この翅が渇いて伸びて、妖精の背中に広がったらさぞ美しいことだろう…彼は目を細めた。
 だが数日後、彼がいつもの散歩から戻ると部屋のどこにも妖精の姿はなかった。
 窓が大きく開いており、窓枠にきらきらと光る鱗粉のようなものがこぼれている。
「そうか…行ってしまったか…」
 妖精はもう十分に成長し、一人前になって旅立ったのだ。
 図鑑にはどこかに妖精の国があると書いてあったが、そこへ向かったのかそれともそんなおとぎ話のような場所ではなく、己の住むべき場所を探しに旅立ったのか…どちらにしても、もう彼の干渉することではない。
 ほんの少し寂しい気持ちはしたが、彼はひとつ息を吐いて、不要になった模型の部屋を物置へ押し込み、図鑑を書庫の奥へと片付けた。
 それからまた十日余りが過ぎたころ、彼は散歩の途中、荒れ野の中に横たわる妖精の姿を見つけた。
 鳥や獣に襲われたわけではなく、ごく自然に死を迎えたようで、土気色の顔は穏やかだった。
 そして妖精の背中できらめいていた翅は、風に晒されてぼろぼろになり光を失っていた。
「お前は…寿命を全うしたのだろう?」
 問いかけるようにそう言って、彼は近くに穴を掘って妖精を埋めてやった…。

 声と軽い揺さぶりにカワラザキは目を開けた。
「幽鬼か…」
「ずいぶんと寝坊だな。もう陽は高いぞ。起きてこないから樊瑞が心配していた」
「ああ…」
 短く返事をして半身を起す。
 ベッドの端に腰かけていた幽鬼が、それを合図に立ちあがった。
「遅れたから朝食は定例会のあとだな。エージェントには言っておく」
「ん…」
 カワラザキは頭をちょっと掻いてから、思い出したように問うた。
「お前の翅は何色だ」
 幽鬼は一瞬、怪訝そうな顔になり鼻息とともに答える。
「背中にあるものなんぞ見えんよ…まだ寝ぼけてるのか」
「いや…」
「俺は先に行ってる。支度ができたらきてくれ」
 軽く手を上げて去っていく幽鬼の背中に翅がないのを見たカワラザキは、目を細めて小さくつぶやいた。
「まだ、行くなよ…」

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Author:まいりぃまいろ
ツイッターでフォロワーさんの描かれたウサヒツを見て書きました~。
レッドは絶対荒唐無稽な夢を見る。

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