GRで萌えてみる

「ジャイアントロボ」のBF団十傑集で妄想展開中。メインは成長したサニー(17歳設定)のラブストーリーとか10歳くらいの幽鬼のお話。拍手・コメント等いただけたら管理人喜びますw

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やさしさにさようなら

 カワラザキに引き取られ、私邸で育てられて、4年が過ぎた。
 14歳の幽鬼は、つい先日私邸を飛び出してこの港にたどり着いた。
 あてがあったわけではない。
 人間らしい感情を持っている自覚はなかったが、幽鬼にも一人前に反抗期がきたらしい。
 漠然と過ぎていく毎日になんだか嫌気がさし、たまたま足を踏み入れたカワラザキの書斎で、机の上に乱雑に置かれた金を握りしめて飛び出したのだ。
 世間を知らない幽鬼に吹っかけてきたのか、行き当たりばったりの船に乗り込んで、この港に着いたときには所持金は空っぽになっていた。
 これからどうしようか、思案に暮れているところへ声をかけられた。
「なにをしてるの?」
 振り向けば、浅黒い肌の女が幽鬼を見つめている。
「仕事を探しているようには見えないけれど…」
 幽鬼は黙っていた。
 それより問題なのは、なんとか陸へ上がったまではよかったが、ひどい船酔いでさっきから気分が悪くて仕方がない。
「あら!ちょっと、坊や!」

 海は幽鬼が想像していた場所じゃなかった。
 私邸は町の山の手にあったし、何度か検査のために連れていかれた支部は砂漠の真ん中だった。
 本で見る海は、どこまでも青く美しい憧れの場所だったはずなのに、実際はやけにべたべたとした風がまとわりつき、太陽の照り返しも手伝っての不快な場所だった。
 安っぽい貨物船の、よくない食事にも問題があったのだろう。
 慣れない体験での悪夢にうなされていたのを、耳をつんざく汽笛の音と強い西日で現実に引き戻された。
「あら、気がついたんだね」
「…うるさい…」
「ああ、出航するところだから…少し我慢してよ」
 鼻をくすぐるいい香りに気づく。
「急に倒れたからびっくりしたけど、お腹がすいてるんじゃないの?」
 彼女は幽鬼が寝ているベッドの脇へテーブルを寄せ、トレイを置いた。
 野菜のスープと魚のフライにパン、そして冷たい水…今はこれが一番ありがたかった。
 彼女は水を飲む幽鬼を楽しそうに見ている。
「ねえ…もしかして家出してきたの?」
 一瞬、動きが止まった。
「ふふ、やっぱり…いいとこの坊やみたいだし、なんとなくそんな気はしたんだけど」
 幽鬼は不安そうに彼女を上目で見る。
「大丈夫よ。どこかに連絡しようとか帰れって言おうなんて思ってないから。ここにはあんたみたいな人間、少なくないもの」

 なにやら階下からにぎやかな声がしてくる。
「ああ、そろそろ店を開ける時間だわ。あんたはここから降りてこないほうがいいわね。酔っ払いに絡まれるのはごめんだろうから」
 その言葉通り、日が沈むころには階下の喧騒は幽鬼のところにまで聞こえてきた。
 幽鬼は窓を開けて、改めて吸い込む潮の香りと自分が乗ってきたのとはくらべものにもならない大型貨物船の荷揚げに目を引かれていた。
 真夜中を過ぎたころ、酔っ払いの船員たちも門限を気にして引き上げたらしく、彼女がやってきた。
「少しは落ち着いた?」
 幽鬼はうなずく。
「家に帰りたくなったらいつでも言ってね。連絡取ってあげるから」
 カワラザキは、執事は、夫人は幽鬼のことを心配しているだろうか。
 それとも厄介者を追い払えたと胸を撫で下ろしているだろうか…彼らに限ってそんなことはない。
 そう考えて思わず首を振ったのを彼女に見られた。
「ふふ、家族が心配してるかって思ってるの?」
「あ…」
「子供がいなくなって心配しない親はいないよ。でも…あんたは家族に心配させたくて家出したの?」
 自分は…どうなのだろうかと幽鬼は逡巡する。
「親の気持ちを試すような真似は歓迎しないね。自分を理解してほしいなら真っ向から話してみるほうが得策だと思うよ…って、ああ、駄目だわ。説教臭くなっちゃった」
 苦笑する彼女に、幽鬼は不思議となにもかも話せるような気になった。
 そして、海が見たかったこと、金を持ち出してしまったこと、おめおめとこのまま迎えにきてもらうわけにはいかないことなどを話した。
「へえ…それだけしっかりした考えを持ってるんなら、そこいらの甘ちゃんとは違うみたいだね。それじゃあここでしばらく働くっていうのはどうかしら?毎日給料をもらえば、あんたが持ち出した金額をためて帰ればいいじゃないの。ああ、このベッドと食事は無償でいいわ。あんたを拾ったのはあたしなんだから」
 ずいぶんな言われ方もあったものだが、そういうのも悪くないかと幽鬼は彼女の厚意に甘えることにした。


 仕事をくれた大型貨物船の船長は親切な男で、幽鬼が家の場所を告げるとそこまでの旅費を教えてくれ、彼女の口利きもあったのだろうが、真面目に働いたために十日ほどでためることができた。
 いっそしばらくここへ腰を落ち着けようかと思っていた日の朝、彼女が新聞を持って入ってきた。
「ねえ、これ、あんたのことじゃないの?」
 新聞の尋ね人の欄に、自分のことらしきものが載っている。
 しかも掲載人は執事の名前になっていた。
「…帰る」
 やはり自分は心配と迷惑をかけたのだ…帰ったら叱られるに決まってるだろうが、それでも謝らずにはいられなかった。
「それがいいね。連絡する?」
「…自分で…帰る」
 船長に話をつけ、貨物船へ向かおうとして店の入り口で幽鬼は振り向いた。
「…きっと…返しにくるから…」
「ふふ、あてにしないで待ってるよ」
 幽鬼の姿が見えなくなってから、彼女は店の奥へ目をやった。
「いい子だね」
「だろう?」
 現れたのはクフィーヤ姿の男。
「あの子の家、探してたんじゃないの?」
「そりゃもう大騒ぎだったさ。老練な人物があそこまで取り乱したのは初めて見たよ」
「あらまあ、じゃあもっと早く連絡してあげればよかったかしらね」
「いや。ここはあえて心を鬼にして、あの子を成長させるべきだと思ってさ」
「ふふ…ほんとはあんたのことだから、騒ぎを楽しんでたんじゃないの?」
「さあ、どうだろうねえ」
 とぼけた口調の男に寄り添い、彼女は汽笛とともに遠ざかっていく船を見つめていた。

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Author:まいりぃまいろ
ツイッターでフォロワーさんの描かれたウサヒツを見て書きました~。
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