GRで萌えてみる

「ジャイアントロボ」のBF団十傑集で妄想展開中。メインは成長したサニー(17歳設定)のラブストーリーとか10歳くらいの幽鬼のお話。拍手・コメント等いただけたら管理人喜びますw

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リバイバル

 小さなケースを携えたヒィッツカラルドが、残月の私室を訪れた。
「珍しいこともあるものだ。貴公が私を訪ねてくるなど…」
「いや、噂好きの部下から、君がレトロなものを蒐集していると聞いてね。見てほしいものがあるんだ」
 そう言ってケースを開け、ヒィッツカラルドが取り出してきたのは映画のフィルムリール。
「これを再生できる機械はあるのかな」
 ヒィッツカラルドにしては珍しく、戸惑うような問いかけに残月は即答する。
「無論。今、準備するとしよう」
 そうしてヒィッツカラルドを、そのためだけに作った映写室へと連れていった。
「それにしても…」
 そのフィルムリールをセットする機械を見ながら、ヒィッツカラルドは率直に言う。
「ずいぶん不格好なものなのだな。このフィルム自体もけっこう大きなものだが」
「今のデジタルとは違ってこの大きさが精一杯だったのだな…では、そちらのスクリーンを見てくれ」
 そう大きくはない白のスクリーンに向かって腰かける。
 ほどなく動き始めたフィルムがジジジと音を立てて、スクリーンに映像を映し始めた。
「ゆっくり見ているといい。私は退室する」
「いや、ここにいてくれ」
 去ろうとする残月をヒィッツカラルドは躊躇なく止めた。
「私は機械の操作がわからない。見終わってから君を探すのは面倒だ」
 なるほどと思い、留まった残月は壁に寄り掛かった。
 元々この部屋は自分専用のものだから椅子など一脚しか置いていない。
 それを今はヒィッツカラルドに進呈しているのだから仕方がないと言えばそこまでだが。
 ほかにすることもないので、どうしても映像に目がいってしまう。
 それは、残月が勝手に抱いていたヒィッツカラルドのイメージとは少し違うものだった。
 モノクロの映像は無声で音楽もなく、フィルムが古いせいで画面いっぱいに雨が降るように線が出る。
 しかし、スクリーンに映し出されているオペラ歌手の美しさだけはよくわかった。
「美しいプリマドンナだな」
「プリマ?…ああ、この女性のことか」
「オペラの主役なのだろう?それをプリマドンナと呼ぶ」
 ヒィッツカラルドは残月の説明に軽くうなずき、おもむろに話し始めた。



「私の、初恋だ」
「ほう」
 意外な言葉に残月が声を上げる。
「初めて彼女を見たのは…たぶん父か母が君と同じようなレトロ趣味だったんだろうが、家にあった古いポスターだった。まだスクールに上がって間もない子供のくせに、彼女を見てときめいたね」
「早熟なあたりは、さすがと言わせてもらいたい」
 残月が話に載ってきたとわかると、ヒィッツカラルドの舌は滑らかに動き出す。
「それから…それから図書館だとか古物商や、いろいろなところで彼女の姿を探した。ハイスクールへ通うころには何人もの女の子と付き合ったが、彼女のことはまた別だった」
 スクリーンには音こそないものの、彼女が高らかにアリアを歌いあげているらしきシーンが映っている。
「カレッジを卒業してしばらくしたころ、このフィルムを手に入れた…私は再生する機械を持っていなかったし、再生する方法も知らなかったが、これで彼女を手に入れたような気になっていたよ」
「ふむ」
「それからまたしばらくして、彼女の声が吹きこまれたレコードを手に入れた。一度だけ古物商のところへ持ちこんで聴かせてもらったが、それはすばらしい美声だった。そして…私の耳に彼女の、本物の彼女が住んでいるという場所の話が入ってきた」
「まさか…!」
 残月が疑ってかかったのも無理はない。
 このアナログなフィルムから察するに、彼女が生きていられる歳月のはずはないのだから。
「まるで子供みたいに心をときめかせて出かけていったよ。もちろん彼女自身が生きているはずはなく、その家に住んでいたのは彼女の孫にあたるという女性だった…その女性も彼女と同じオペラ歌手で、顔は彼女に瓜二つ、しかも私が聴いたのと同じ声で、このフィルムを映しながら目の前でアリアを歌ってくれたよ」
「それは…さぞかし光栄だったことだ」
「だがね…」
 ヒィッツカラルドの顔が寂しげに歪んだ。
「彼女はもういない。孫の女性も私が訪ねたときには皺だらけの老婆になっていた…わかるかね?自分の中の美しい女性が上書きされていくような感覚が…」
「ああ…」
 残月は漠然とした気持ちでうなずく。
「徐々に失望していく私に女性も気づいたのだろうな。自分の衰えていく容姿に抗うこともできず…女性が私になにを望んだと思う?美しい思い出のまま消えたいと…祖母の記憶を留めて、自分を消してほしいと願ったんだ」
「それで…どうしたのだ」
「私は女性に指を向けた。これと同じような白いスクリーンに血が飛んで、彼女は真っ赤に染まったまま歌い続けていた…」
 スクリーンの中の彼女は歌い終わり、こちらに向かって艶やかな笑みを見せている。
「私は…美しいままの彼女をつなぎとめたんだ…」
 時の残酷さを思い沈黙した映写室の中で、映画が終わり彼女を消したフィルムのカラカラという音だけが響いていた。

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Author:まいりぃまいろ
ツイッターでフォロワーさんの描かれたウサヒツを見て書きました~。
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