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2011.12/21 [Wed]
大事な気持ち(残月)
サニーが滞在している町の中央には公園があり、クリスマスにあわせて8mほどのクリスマスツリーが立てられている。
何万個もの電飾がつけられたツリーだが、実際に点灯されたのはつい一か月ほど前からだ。
ツリーが飾られるようになったのはずいぶん前なのだが、いつからかこんな噂が立つようになった。
このツリーは夕方6時から午前0時まで点灯されている。
ツリーのてっぺんにはひときわ大きな星が飾られているのだが、その星はコンピューター制御で6時間の間に3回だけ輝くするようになっている。
ただ、その輝く間隔はランダムになっており、2時間ごとにきちんきちんと輝いたりする日もあれば、立て続けに2回、そしてそれきり沈黙して忘れたころに1回などと不規則に輝くのだ。
そして肝心の噂は…クリスマスイブに、この星の輝きを見たカップルはずっと幸せでいられる、というものだった。
昨年も何組ものカップルがこの星の輝くのを期待してツリーに集まったが、寒い中で6時間もツリーとにらめっこしていられるはずもなく、運のよいカップルはせいぜい1組か2組だった。
サニーは白い息を吐きながら、まだ点灯していないツリーを見上げ携帯を確認した。
残月はずっと留守にしている。
任務のためにどこかへ出ているというのはわかっているが、極秘のために連絡を取ることもかなわなければ、イブに戻ってくるという保証もない。
「きっと…間に合わないわ」
周囲に点在しているカップルが、イブの夜に約束しているのを小耳にはさみながら、サニーは寂しく微笑んだ。
第一、肝心のイブがくる前にサニーが本部へ呼び戻されてしまったし。
サニーの携帯に残月から連絡があったのは、イブの午後10時だった。
残月から招かれて、はうれしかったが部屋の中央に置かれたこじんまりとしたクリスマスツリーを見ると、どうしてもあの噂のツリーのことを思い出してしまう。
「ありがとうございます。うれしいですわ」
クリスマスプレゼントをもらい、微笑んだつもりだったが残月には気取られてしまった。
「ふむ、サニーがうれしいと言いながらも沈んだ表情なのはなぜだ。私はイブに間に合うように戻ってきたつもりだし、部屋の雰囲気も悪くはないと思うのだが」
サニーは申し訳ないと思いながらも、残月には見透かされるだろうとあのツリーの話をした。
ただし、ずっと幸せというのは恥ずかしいのでいいことがある、くらいにはごまかしたが。
「なるほど」
残月は吸っていた煙管をテーブルに置くと、いきなりサニーをお姫さま抱っこして走り出した。
「私の足なら、サニーの話していた町までそう時間はかからぬだろう」
そしてその言葉通り、サニーと残月は11時40分にはあのツリーの下に立っていた。
すでに星は何度輝いたのか、サニーはそればかり気にしていたが周囲にまだカップルが立っているところを見ると、3度目はまだ起きていないようだ。
「む?」
「きゃ…!」
一瞬、星が輝き、周囲が昼間のように明るくなったかと思ったらすぐに消えた。
まばゆい光のせいで視力を奪われたサニーが思わず残月に抱き留められる。
「星が…見られた…!」
思わずそんな言葉が口から出てしまう。
周囲のカップルも同じだった。
「さて、かくも女人の心とは不思議なものよ。互いに愛し愛されているというのに確信もないまじないのようなものを有難がる…私には少々解せんな」
サニーははにかむように微笑んで残月を見上げた。
「でもそれが…女の子の大事な気持ちなのです」
残月は優しく笑い、サニーの頬をそっと包み込んで口づける…周囲のカップルがそうしているように。
午前0時の鐘とともにツリーの明かりが一斉に消えた。
何万個もの電飾がつけられたツリーだが、実際に点灯されたのはつい一か月ほど前からだ。
ツリーが飾られるようになったのはずいぶん前なのだが、いつからかこんな噂が立つようになった。
このツリーは夕方6時から午前0時まで点灯されている。
ツリーのてっぺんにはひときわ大きな星が飾られているのだが、その星はコンピューター制御で6時間の間に3回だけ輝くするようになっている。
ただ、その輝く間隔はランダムになっており、2時間ごとにきちんきちんと輝いたりする日もあれば、立て続けに2回、そしてそれきり沈黙して忘れたころに1回などと不規則に輝くのだ。
そして肝心の噂は…クリスマスイブに、この星の輝きを見たカップルはずっと幸せでいられる、というものだった。
昨年も何組ものカップルがこの星の輝くのを期待してツリーに集まったが、寒い中で6時間もツリーとにらめっこしていられるはずもなく、運のよいカップルはせいぜい1組か2組だった。
サニーは白い息を吐きながら、まだ点灯していないツリーを見上げ携帯を確認した。
残月はずっと留守にしている。
任務のためにどこかへ出ているというのはわかっているが、極秘のために連絡を取ることもかなわなければ、イブに戻ってくるという保証もない。
「きっと…間に合わないわ」
周囲に点在しているカップルが、イブの夜に約束しているのを小耳にはさみながら、サニーは寂しく微笑んだ。
第一、肝心のイブがくる前にサニーが本部へ呼び戻されてしまったし。
サニーの携帯に残月から連絡があったのは、イブの午後10時だった。
残月から招かれて、はうれしかったが部屋の中央に置かれたこじんまりとしたクリスマスツリーを見ると、どうしてもあの噂のツリーのことを思い出してしまう。
「ありがとうございます。うれしいですわ」
クリスマスプレゼントをもらい、微笑んだつもりだったが残月には気取られてしまった。
「ふむ、サニーがうれしいと言いながらも沈んだ表情なのはなぜだ。私はイブに間に合うように戻ってきたつもりだし、部屋の雰囲気も悪くはないと思うのだが」
サニーは申し訳ないと思いながらも、残月には見透かされるだろうとあのツリーの話をした。
ただし、ずっと幸せというのは恥ずかしいのでいいことがある、くらいにはごまかしたが。
「なるほど」
残月は吸っていた煙管をテーブルに置くと、いきなりサニーをお姫さま抱っこして走り出した。
「私の足なら、サニーの話していた町までそう時間はかからぬだろう」
そしてその言葉通り、サニーと残月は11時40分にはあのツリーの下に立っていた。
すでに星は何度輝いたのか、サニーはそればかり気にしていたが周囲にまだカップルが立っているところを見ると、3度目はまだ起きていないようだ。
「む?」
「きゃ…!」
一瞬、星が輝き、周囲が昼間のように明るくなったかと思ったらすぐに消えた。
まばゆい光のせいで視力を奪われたサニーが思わず残月に抱き留められる。
「星が…見られた…!」
思わずそんな言葉が口から出てしまう。
周囲のカップルも同じだった。
「さて、かくも女人の心とは不思議なものよ。互いに愛し愛されているというのに確信もないまじないのようなものを有難がる…私には少々解せんな」
サニーははにかむように微笑んで残月を見上げた。
「でもそれが…女の子の大事な気持ちなのです」
残月は優しく笑い、サニーの頬をそっと包み込んで口づける…周囲のカップルがそうしているように。
午前0時の鐘とともにツリーの明かりが一斉に消えた。
- at 22:12
- [お題:├恋人同士で20のお題]
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