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2009.07/06 [Mon]
先手必勝(樊瑞)
最近樊瑞は気が気でない。
ときおりサニーの部屋に見え隠れする男の影…アシスタントやエージェントではない、特別な存在。
最初は十傑のひとりかと思ったが、樊瑞がいるのに夜分遅くまで部屋に入り浸る者などあるはずがない。
(…これは、浮気、というものなのか?)
樊瑞は自分の部下をひとり呼び、こっそりとサニーの部屋を探らせた。
「確かにお部屋には男性がいらっしゃるようです」
部下はその相手がだれか見極めきれぬために敬語を使う。
「エージェントかサニーのアシスタントではないのか」
「サニーさまのアシスタントは先日女性団員に代わりました。また、エージェントだとしてもサニーさまのお部屋に入れる、などの者はA級か特A級に限られます。少なくともあの声の方を私は存じません」
「ふうむ…」
そうすると自分のあずかり知らぬところで友達でもできたか、と考えるが一般人が本部に出入りできるなどありえない。
「その…その男は毎日きているのか?」
「毎日、というわけではないようです」
部下はポケットからメモを取り出した。
「情報を収集しましたところ、その方の存在が確認されたのは2ヶ月ほど前から。昼間はサニーさまも執務を行っておられますから、訪ねてこられるのはやはり夜のようです。ときにはメイドに夜食を運ばせることもおありのようで…」
「メイドからの情報は?」
「夜食はドアでサニーさまが直接受け取られたと。室内には入らせてもらえなかったそうです。ただ」
「ただ?」
「チラと男性の足が見えたと話しておりました」
男の影、そしてその存在を隠そうとするなど、これはもう疑う余地はない。
「待て。その男がやってきていた日を教えよ」
部下がメモから挙げた日は、樊瑞が任務から戻ってきていた日。
「すると…ワシが任務で留守にしていたときには、そやつはサニーを訪ねていなかったということだな?」
「はい」
わからない…本来ならば、樊瑞が留守にしているときこそ男とあうべきではないのか。
苛立ちが最高潮に達したとき、樊瑞はサニーの部屋のドアを仙術で吹き飛ばしていた。
「あらら」
すました顔でサニーが現れる。
「どうなさったの樊瑞さま」
「どうしたもこうしたもあるか」
樊瑞はひと呼吸して、サニーに指を突きつけた。
「男を出せ!」
「男?」
サニーが小首をかしげる。
「そうだ!お前が隠し、こっそりとあっている男を出せ!サニーを奪いたければワシを倒してみよとな!」
ややあってからサニーはお腹を抱えて笑い始めた。
「な、なにがおかしい」
「だって…樊瑞さま、まんまとひっかかったんですもの」
そうして樊瑞の手を取り奥へと連れていく。奥の部屋の椅子には男のマネキンが無表情に座っていた。
「な…!し、しかし話していた声は」
「ディスクでいくらでも流せますわ。ひとりでするお芝居もけっこう楽しかったし」
振り上げた拳の行先をなくし、樊瑞は部屋の中央にどっかりと座った。
「いったいなぜこんなことを…」
「だって樊瑞さま、ずっとお留守でしたし。私のことなんか忘れてしまうといけないと思ったから、私のことで頭をいっぱいにして差し上げようと思ったんですの」
ぶすっとした表情の樊瑞をいたずらっぽくのぞきこむ。
「ね、私のことばっかり考えてくださった?」
寂しい思いをさせた申し訳なさとまんまとだまされた悔しさ…なにもかもが一緒になって樊瑞は大声で言い放った。
「仕事になぞならんわ!」
先手を打ったサニーだけがうれしそうに笑っている。
ときおりサニーの部屋に見え隠れする男の影…アシスタントやエージェントではない、特別な存在。
最初は十傑のひとりかと思ったが、樊瑞がいるのに夜分遅くまで部屋に入り浸る者などあるはずがない。
(…これは、浮気、というものなのか?)
樊瑞は自分の部下をひとり呼び、こっそりとサニーの部屋を探らせた。
「確かにお部屋には男性がいらっしゃるようです」
部下はその相手がだれか見極めきれぬために敬語を使う。
「エージェントかサニーのアシスタントではないのか」
「サニーさまのアシスタントは先日女性団員に代わりました。また、エージェントだとしてもサニーさまのお部屋に入れる、などの者はA級か特A級に限られます。少なくともあの声の方を私は存じません」
「ふうむ…」
そうすると自分のあずかり知らぬところで友達でもできたか、と考えるが一般人が本部に出入りできるなどありえない。
「その…その男は毎日きているのか?」
「毎日、というわけではないようです」
部下はポケットからメモを取り出した。
「情報を収集しましたところ、その方の存在が確認されたのは2ヶ月ほど前から。昼間はサニーさまも執務を行っておられますから、訪ねてこられるのはやはり夜のようです。ときにはメイドに夜食を運ばせることもおありのようで…」
「メイドからの情報は?」
「夜食はドアでサニーさまが直接受け取られたと。室内には入らせてもらえなかったそうです。ただ」
「ただ?」
「チラと男性の足が見えたと話しておりました」
男の影、そしてその存在を隠そうとするなど、これはもう疑う余地はない。
「待て。その男がやってきていた日を教えよ」
部下がメモから挙げた日は、樊瑞が任務から戻ってきていた日。
「すると…ワシが任務で留守にしていたときには、そやつはサニーを訪ねていなかったということだな?」
「はい」
わからない…本来ならば、樊瑞が留守にしているときこそ男とあうべきではないのか。
苛立ちが最高潮に達したとき、樊瑞はサニーの部屋のドアを仙術で吹き飛ばしていた。
「あらら」
すました顔でサニーが現れる。
「どうなさったの樊瑞さま」
「どうしたもこうしたもあるか」
樊瑞はひと呼吸して、サニーに指を突きつけた。
「男を出せ!」
「男?」
サニーが小首をかしげる。
「そうだ!お前が隠し、こっそりとあっている男を出せ!サニーを奪いたければワシを倒してみよとな!」
ややあってからサニーはお腹を抱えて笑い始めた。
「な、なにがおかしい」
「だって…樊瑞さま、まんまとひっかかったんですもの」
そうして樊瑞の手を取り奥へと連れていく。奥の部屋の椅子には男のマネキンが無表情に座っていた。
「な…!し、しかし話していた声は」
「ディスクでいくらでも流せますわ。ひとりでするお芝居もけっこう楽しかったし」
振り上げた拳の行先をなくし、樊瑞は部屋の中央にどっかりと座った。
「いったいなぜこんなことを…」
「だって樊瑞さま、ずっとお留守でしたし。私のことなんか忘れてしまうといけないと思ったから、私のことで頭をいっぱいにして差し上げようと思ったんですの」
ぶすっとした表情の樊瑞をいたずらっぽくのぞきこむ。
「ね、私のことばっかり考えてくださった?」
寂しい思いをさせた申し訳なさとまんまとだまされた悔しさ…なにもかもが一緒になって樊瑞は大声で言い放った。
「仕事になぞならんわ!」
先手を打ったサニーだけがうれしそうに笑っている。
- at 22:27
- [お題:├恋人同士で20のお題]
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